人生の折り返し地点は過ぎている。
だが進むべき道を見失ってしまった。
新たな道を探さなければならないが、行きたい先が分からない。
生活費のために働くのは悪いことではないが、残りの人生に限りがあると実感する年齢になって、奈々子は良質な人生を送りたいと願っている。
ただ惰性で生きているだけではイヤだ。
自分の人生に、何か手ごたえを感じたかった。
生きているという確かな実感。
それはどこにあるのだろう。
何も見えない。
行きたい先が見えないから、どこに向かって歩けばいいのか分からない。自分がどこにいるのかさえ分からない。
まるで暗闇の迷子だ。
取り合えず派遣で働き始めたものの、それは迷子になった子供が確かな信頼を寄せる親ではなく、知らないよそのおじさんについて行くようなものだった。
―このおじさんについて行っていいの?
飴玉はくれるけど、親切にしてくれるけど、どこかとんでもない所に連れて行かれはしない?
アタシは奈々子に問いかけた。
「だって、これ以上一人で当てもなくさまよってるの怖いんだもの」
そう言って、奈々子は派遣社員として働き始めた。
でも途中で、奈々子は逃げ出したくなったんだ、とアタシは思う。
母親の認知症疑惑は、ただのきっかけに過ぎない。
奈々子は、自分の納まるべき場所に行きたかったんだ。
自分の足でその場所を見つけたかったんだ。
奈々子の納まるべき場所。
それがどこにあるのかアタシにもよく分からなかった。
だから、奈々子は一人で不安に慄く迷子でいるしかなかった。
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